コーディングWebアクセシビリティ ー Webアクセシビリティーへの第一歩を踏み出す本
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コーディングWebアクセシビリティ – WAI-ARIAで実現するマルチデバイス環境のWebアプリケーションは、Webにおけるアクセシビリティーの確保を、HTML、CSS、JavaScript、そしてWAI-ARIA、つまりコーディングの技術を用いてどう取り組んでいけばいいかということについて解説する本です。
読みもののようにに軽快な文章
この本はApps For All: Coding Accessible Web Applicationsという海外の電子書籍を日本語訳したもので、文章のテイストも何となく海外っぽいジョーク的な表現を交えたものになっています。
何となく小難しい印象のあるアクセシビリティーの話題ですが、この語り口と文章内の言葉選びが解説を読み物のように読ませてくれているように感じました。そういう表現自体が好きかどうかは人によっちゃうと思いますけど。
本のサイズが小さいのもこの本にはマッチしていたように思います。移動中に読みやすいですね。
段階的に詳しい解説に
簡単なWebとアクセシビリティーの解説から始まり、次に代表的なWebのインターフェイスであるボタンを通して、WAI-ARIAが持つロール(役割)、ステート(状態)、プロパティー(情報)といった特徴を解説していきます。
話しの流れでだんだんと、マークアップからスタイル、そしてWAI-ARIAの比較的ポピュラーな各role属性値、aria-*属性を、というようにWeb制作者なら誰でもわかるようなところから順を追って知っていくことができるような解説になっています。
こういうインターフェイスにはこんな意味があって、見た目としてはこういう特徴を持っているべきで、実装はこうしますという感じで、各属性や属性値がなぜ定義されているのかをストーリーとして把握できるようになっているんですよね。
インターフェイスへの理解を助ける
Webのインターフェイスとしてはボタンの他にもダイアログ、タブ、フォームのように、アプリケーションだけではなく単なるWebページでも用いられるようなものがありますが、この本ではそれらにもひととおり触れています。
人によっては見た目から入ってしまって何気なく使っているようなものもあるかと思います。そういう人も、これは本来どういうコーディングをしてあるべきで、どういう実装がされているべきか、というような本質的な理解につなげられるんではないでしょうか。
感じたこと
HTMLはCSSによる見た目の切り離し、HTML5の新しい要素によるセマンティクスの強化という流れを踏んできています。つまり今日のWeb制作では見た目だけ、あるいは機能だけを実現するのは不十分で、それだけをやればいいのならこうした進化は必要なかったわけです。
Webサイトは見た目と機能を正しく実装することで様々な特性、状況を持つ人に、そして機械にも等しく同じ価値、意味の情報を与えることができます。そのためにWAI-ARIAという技術を知ることはとても意義があるでしょう。
HTML要素や属性はもともと多くのWAI-ARIA属性と同等の意味を持っており、WAI-ARIAは実際にはあまり書くことなく活用できます。その際、自分が書いているHTML要素はWAI-ARIAとしては何にあたるのか、それがどんな意味を持つのかは知っておくとWebのインターフェイスについての理解が深まるはずです。
個人的にもアクセシビリティー、WAI-ARIAの知識の必要性は日に日に強く感じてきていて、実際に案件でもアクセシビリティー対応が求められてきています。仕様もちゃんと日本語で読める状況なので、あまり詳しくなかった人もこれから学習していくことができるでしょう。
- Web制作者が知っておきたいアクセシビリティ最新動向
- Accessible Rich Internet Applications (WAI-ARIA) 1.0 日本語訳
- W3CがARIA in HTMLの最初の草案を公開 | アクセシビリティBlog | ミツエーリンクス
おわりに
今回は出版社の株式会社ボーンデジタル様より本書をいただきました。この場をもってお礼申し上げます。
翻訳を行った太田さん、伊原さんとはたびたび話しをする機会もあった方々なので本の話しを聞いてからずっと楽しみにしていましたが、私は期待通りの面白い本だと思いました。本を読んだ他の方からは物足りないという話しも聞いていたんですが…私はWAI-ARIAの知識もあまりなかったこともあってか、この本はWAI-ARIAに入門するに適した内容なのではないかなと感じられました。
そして、そんな物足りないという人に向けてなのか、更に実践的なアプローチの話題はデザイニングWebアクセシビリティ – アクセシブルな設計とコンテンツのための実践アプローチという続刊でなされるという話しらしいんですよね。まさかの続編w
こちらも今予約受付中のようなので、もっと詳しく知りたい人はこっちも読んでみるといいかもですね!
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