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人は手続きを楽しむ

この記事は約6分ぐらいで読めます


道具やサービスってどんどん便利になりますが、それをめざすことによって複雑になるもの、削ぎ落とされるものがありますよね。今日はコラム的な話です。

人は道具やサービスに便利さを求め、それを実現してくれるものにお金を払いますよね。でも、ユーザーとしてそれを選ぶということは必ずしもそれを好きだということにはならなかったりします。それってなぜなんでしょうか。

レコードとCD、本と電子書籍

過程はどうあれ、同じような体験が得られる

過程はどうあれ、同じような体験が得られる

昔はレコードで音楽を聞いていたわけですが、それが時代が進むにつれカセットテープになったり、CDになったりしています。今だとダウンロードコンテンツですね。知識を得るには本を読んだりするんですが、それも電子書籍に…あ、これもダウンロードコンテンツですね。

こんなことを言うと懐古厨とか言われちゃうわけですけど、古き良きものを好む気持ちってどうしてもありますよね。

じゃあなんで私たちはそういう古いものが好きだったんでしょうか?私はこれを手続きを楽しんでいるからだと考えています

やりたくない面倒な作業とやりたい面倒な作業

行為は同じだが、結果の違う様々なこと

行為は同じだが、結果の違う様々なこと

私はWeb制作者なのに、入力フォームに情報を入力する作業が大っ嫌いです。本当にもう、ただただめんどくさいんです。これはもちろんフォームというものの実装の良さ、例えば半角全角を自動でやってくれるとかそういうこともあるんでしょうけど、とにかくこの作業自体が好きではないんですね。

少し話しが変わりますが、コーヒーを自分で豆を挽いたりするのが好きな人っているじゃないですか。アレって面白くないですか?別に簡単にコーヒーを淹れる方法はあるのに、そのコーヒーを飲もうと思うたびに発生する手間を選ぼうとする…。

この二つ、どちらも何かをすることで自分がしたいことを実現する行為なのになぜこんなに印象が違うんでしょーか。

行為と結果の結びつき

豆を挽くとコーヒー(と豊かな時間)が得られる

豆を挽くとコーヒー(と豊かな時間)が得られる

上の二つは、その行為の最中に、得られる結果がイメージしやすいかどうかに違いがあるのではないかと思っています。豆を挽くから香りが出る、そういうようなことです。

フォームを入力して得られる結果はその送信している内容、返ってくる結果からして様々です。毎月好きな音楽が聞けるかもしれないですし、ピザが送られてくるかもしれないですし、銀行口座から残高が10万減ってバッグの支払いが完了するかもしれません。ともかく色んなことが起きるのに、作業は同じです。

豆を挽くという行為にはその後味わうコーヒーの味や香りに対する期待が含まれており、それを積み重ねていくから楽しめるわけです。レコードの良さってその音質とかどうとかより今から音楽を聴くぞと針を落とすこと、本はページをめくって次の展開をたぐり寄せる、そういう行為と結果が結びついた手続きにこそ魅力を感じているんじゃないかと思うんですよね。

ボタン一つで

その先に何が起こるか想像しづらい

その先に何が起こるか想像しづらい

消費、実行するだけの、あまり興味のないことはどんどん簡単になってくれた方がいいですよね。コーヒーを目を覚ましてくれる飲み物としか捉えていなければ、それを得るための手続きは簡単な方がいいに決まってます。ボタン一つでそれが得られるなら便利ですよね!

お米を炊く、コーヒーを淹れる、メールを送信する、友人に対する好意を表明する、全てボタン一つ…今そうやってできることってたくさんあります。でも、そうやって簡略化された手続きはその先に起きる現象に対する興味を薄れさせているようにも思えます。

手続きに効率化を求めるのが仕事

仕事の上での無駄は省きたいですよね

仕事の上での無駄は省きたいですよね

何をおいても効率化した方が良いこと、と考えるとそれは仕事かなと思います。仕事の世界では如何に無駄を削ぎ落とすか、如何に効率的に、低コストでというのは絶対的な正義のように扱われることが多いでしょう。

ただそれを実際に行うのは人間であって、その分の触れ幅を考慮に入れないのはあまり現実的ではない気もしています。作業自体に愛着を持って、ただひたすらにそれを行うことを好む人はその作業によって得られる成果や結果をイメージできるはずです。作業の楽しさで仕事の手段を選ぶのはアマチュア的にも感じますけど、結果に結びつく手段を選びたいのは自然なことなのではないかなーと思うわけです。

とはいえ効率化は必要だと思うのでさじ加減なんでしょうけどね。この、ある手続きの是非を問うときにどの程度効率を優先するかストレスなくできるかを優先するかは職場環境や経営者によって違うのでしょう。

おわりに

ちょっととりとめなくなっちゃいましたが要点をまとめます。

  • 効率化を求めると手続きが単純化する
  • 手続きを単純化すると、行為と成果の結びつきが薄れる
  • 成果のイメージできない行為は作業感が強く、手続きの魅力を失う
  • 手続きにどの程度魅力を求めてよいかは状況によって違うが、それがどの程度許されるかによって物事の取り組みやすさは変わる

例えばツールを選り好みするということは、趣味ならいいけど仕事ならそれはダメだと、正論で言うとそうなっちゃいそうです。とはいえモチベーションが下がるくらいだったらツールは選んでもいいよってひともいますし、それが許されるか許されないかで雰囲気が変わっちゃいます。

この辺の話しを突き詰めると業務用アプリのユーザーエクスペリエンスとかそう言う話しになるんでしょうけど、いったんここで終わります。

手続きを楽しんでいいかどうか、そしてもちろん作る側としてはそこに配慮するかどうかって、結構重要じゃない?という話しでした。