[ブログ]書籍のページをWebで引用するとき知っておきたいこと
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マンガのコマや雑誌のキャプチャをブログで使いたい
ブログやメディアをWebで運営していて、ある雑誌や単行本のページのキャプチャを使いたいということがありますよね。私もたまにあるんですけど、こういうときどうするのがいいんでしょうか。突っ込むとコワイ著作権関係の話題ですが、とはいえやりたいと思ったことについてあらかじめ知っておくことも大事だと思いますw ちなみにWEBCRE8.jpでは過去にも著作権やライセンス関係の記事をいくつか書いています。
特にグレーな感じで扱われている書籍や雑誌のページをWebサイトに掲載するためにはどうするべきなんでしょうかね?付随する情報まであわせて調べてみました。
引用が前提
まず、今回考えたいのはあくまで紙のコンテンツの引用についてです。つまり改変を伴うパロディや、コンテンツの再配布、紹介、必然性のない利用を目的としません。
引用の要件については言及されることも多いと思いますが、この辺はけんすうさん(@kensuu)のブログ、nanapi社長日記の漫画のコマの引用についてについての調べた結果と謝罪についてでよくまとめられています。
引用と認められる用法は簡単に言うと以下のようになります。
- 公表された著作物であること
- 著作物の出典を明らかにすること
- 引用部分がはっきりしていること
- 引用の必然性があること
- コンテンツの主従がはっきりしていること
このうち必然性と主従がはっきりというのは結構判断が人によって様々な気がしますけど、要は引用という行為の目的は、考察や解説などのコンテンツ上で他者の著作物を提示しながらそれに言及したいというものであると言えるんじゃないかなと思います。
ぶっちゃけ後付けでなんとでも言えてしまう部分ではあるんですが、こうした動機以外の引用と呼んでいる行為は、必然性のない素材としての利用であったり、他者の著作物がコンテンツの価値の大半を占める転載となってしまっている可能性がありますね。
どの程度までが引用と言えるかみたいな話も今回はこれ以上の言及を避けますが、引用については近いうちに記事を書くのでお待ちください★
著作物の出典を明らかにする方法
この記事のキモです。原典を明らかにする方法としては、ISBNコードと書籍の詳細情報を示すということが考えられると思います。
ISBNコードを示す
引用したコンテンツの原典を読者がたどって確認する方法としてはISBNコードが使えます。これはWebにおいてのURLに近い存在だと言えます。ISBNコードがわかれば、例えばAmazonの詳細サーチを使うことでその本の情報を得ることができる他、Wikipediaでは書籍情報源 – WikipediaISBNで書籍を検索できるサービスをいくつも紹介しています。逆にこうしたサービスで書籍のISBNコードを知ることもできますね!
ちなみにISBNというのは国際標準図書番号というもので、書籍を特定するための国際規格です。たいていの場合は10桁のISBN-10と13桁のISBN-13が書かれていますが、これは番号の枯渇のためにISBN-13が作られただけで同じものを指してますし、どちらでも検索できます。
雑誌には特定の号を示すISBNコードはありません。雑誌には雑誌用の国際規格としてISSNというものがあるんですけど、日本では申請がない限り使われていないようです(その代わり国内用の規格として雑誌コードというものがある)。ISSNコードの付与を申請された雑誌は国立国会図書館に収蔵され、NDL-OPAC – 雑誌記事検索で検索ができるようになります。
どうしても雑誌の特定の号を示したい場合はAmazonが規定しているASINを使うという手もあるかも。これならAmazonに売っているものなら特定できますよね。国際規格ではないので微妙な気もしますけど…。
書籍の詳細情報を示す
ISBNでなくとも原典を特定できればいいのではと考えて調べていて興味深く感じたのは書誌情報と記事情報というページに書かれていた内容です。早稲田大学のWebサイトのサブドメインにあります。
このページでは論文やレポートで文献を参考にした場合、書誌情報(題名、著者名、出版社、出版年、請求番号、ISBN)を書くべきだと書いてあります。論文のルールというのはWebドキュメントにおいても参考にしやすいように思います。
便利なことに、Amazonのデータにはそれらの情報があります。ウィジェットを貼付けるツールを使えばそれが簡単に明示できますね!
というわけでAmazonのウィジェットを貼付けるというのは(アフィリエイトで結局ブログオーナーが儲かるじゃんとかそういうのは別問題ですね)そういう意味でも有効な手段なんではないでしょうか。
総合すると
見た目にもコード的にもどの部分が引用であるかをはっきりさせ、ISBNコードを埋め込み、更に書誌情報を明示することで引用は論理的に問題なく成り立ちます。前述のような用法であれば、画像を使うのは問題なさそうです。
更に言えば、それを撮影した写真(ブログにあげたもの)には撮影者の著作権が発生するわけですけど、それはまた別の話になりますね。
無断でできる著作物の利用
たまに誤解されている言葉として無断引用というものがあります。引用はそもそも無断でやっていいものなのでこれは言葉として成立しませんが、無断転載、つまり引用の要件にそわずに許可なく他人の著作物を掲載するということはやってはいけません。
そして、引用する場合以外で無断で他人の著作物を扱っていいもの、それがライセンスの付与された著作物です。このブログでは以下のような記事でその解説をしています。
例えばクリエイティブ・コモンズだと、著作権者とライセンスの明示があれば前述で言ったような脈絡のない利用、それ自体がコンテンツの価値となってしまうような利用、モードによっては改変まで、著作権者の心証を気にせずに使っていいわけです。特に改変には同一性保持権やパロディといった更にややこしい要素が関わってきますけど、改変可となっていればその辺を考慮する必要がないのでひじょーに使いやすいものになります。
コンテンツの制作者がこうしたライセンスを付与して公開するのは著作者、利用者、世の中にとってとても良いことだと思うのでもっと利用が広がればいいですねー。
おわりに
ちょっと長くなりましたが(いつもか)、私の見解と調べたことをあわせて書いてみました。
実際、個人的にはマンガのフレーズやコマを使うこと自体は視覚的にもわかりやすくて、情報を伝えるにあたって非常に有効なことだと思うんですね。と考えると、引用の要件に沿う使い方ではなくて許可を取って使えよということになりますw よく技術系のプレゼンでアニメのキャプチャを使うことやブログの挿絵を使うということがどうなのかという問題になったりしますが、みんなが知っている、興味のある画像で興味を引く、情報の伝達能力を高めるということを考えるとここになんとかウマい着地がないものかと思います。
講談社から出版されている漫画家中村光さんの聖☆おにいさんは、第一巻の冒頭4ページのみがCC BY-ND 2.1 JPで公開しています。
また、漫画家佐藤秀峰さんのブラックジャックによろしくはタイトルと著作者名の明示、事後報告さえすれば規約に則っている限り改変も配布も可能だというふうにしています。
他にも例えばある企業や団体(AdobeとかスライドシェアとかFC2とか)があらかじめ出版社にお金を払って、もしくは提携してそこに登録してある限りスライドやブログでは使い放題、とかそういうことがおきないかなーとかw