クリエイティブ・コモンズのコンテンツは実際どういう場合に使えるのか
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前回の記事クリエイティブ・コモンズの写真を使う人のFlickr以外の選択肢(またはフォト蔵について)の続きです。クリエイティブ・コモンズで写真を公開する、または利用すると言う事はどういう意味、意義があるのかを考えてみました。
クリエイティブ・コモンズとは
クリエイティブ・コモンズとは、クリエイティブ・コモンズ・ライセンス(CCライセンス)を提供している国際的非営利組織とそのプロジェクトの総称です。CCライセンスはインターネット時代のための新しい著作権ルールの普及を目指し、様々な作品の作者が自ら「この条件を守れば私の作品を自由に使って良いですよ」という意思表示をするためのツールです。CCライセンスを利用することで、作者は著作権を保持したまま作品を自由に流通させることができ、受け手はライセンス条件の範囲内で再配布やリミックスなどをすることができます。
More: http://creativecommons.jp/licenses/#ixzz20Yza6lvO
Under Creative Commons License: Attribution
クリエイティブ・コモンズと言うプロジェクトの事はこのように説明されています。
そしてクリエイティブ・コモンズ・ライセンスとは、作り手としては「それが自分のものであることを主張しつつ他の人に使ってもらう為のもの」であり、受け手としては「自分がそのコンテンツをどのように使って良いのかを明確に説明してくれているもの」です。前述のクリエイティブ・コモンズの考え方を利用者、提供者の誰にでも分かりやすく意識してもらう為のライセンスなのです。
クライアントワークに使いづらいライセンス
現在クリエイティブ・コモンズ・ライセンスのバージョンは3.0です。2.0以前はライセンスのモードの種類が多く、必ずしも著作権者表示が必要ではありませんでした。この辺の事はおなじみWikipediaに書かれてますねー。
余談ですけど、クリエイティブ・コモンズの適用範囲にソフトウェアが入ってないのはGPLがあったからなんですね。これは初めて知った。謙虚だなーw wikipediaは完璧なソースではないものの、こうして公式サイトには残らない過去からの流れなんかを残してくれているのが便利なところですよね。
で、我々web制作者の話なんですが。
web制作やクリエイティブワークでは作業の種類によって一般に配布された素材を使って制作を行う事が多々あります。もちろん十分に予算がある場合は、写真を撮影したり権利ごと素材を買ったりするわけですが、予算が少ない場合なかなかそうはいかないです。
そんなときにwebや素材集等のフリー素材、写真サイトの無料写真は大いに役に立ってくれます。
ですがそんな素材の中でもクリエイティブ・コモンズ・ライセンスのものは著作権者表示が必須となっていますから、このライセンス下のものは(特に画像)事実上表記の不可能なクライアントワークでは使いにくいですね。
クリエイティブ・コモンズはクリエイタよりもむしろ一般の人に必要なライセンス
写真素材を探していてこれだと思ったものがクリエイティブ・コモンズだったりすると「あー惜しい><」と思ったりもするわけですが…それはむしろ当然のことです。クリエイティブ・コモンズとは言ってみれば名前の通りそのような「著作権表記をしない用途」からクリエイティブな著作物自体を守っているライセンスであるからです。
本来商売のために制作をするのであれば、それに使われる要素はお金で権利を買い取って調達すればいいはずです。ライセンス無表記で使う事が出来ない(そしてお金を払った素材には著作権表記がいらない)のは、あなたがお金をもらって請け負ったwebサイトにあなたの名前が載らないのと理由も一緒ですね。もちろん提供額等によって直接の交渉の余地があるのも一緒です。
そうした場合、むしろクレジット入りのコンテンツが活躍するのはクライアントワークでない「(主に趣味での)創作活動やブログへの掲載、共有」という場面においてになります。趣味で絵や動画を作ったりブログに掲載する人は、プロの制作者よりも沢山いますよね。趣味で創作に使われる素材の配布をしている人もいるのでちょっとややこしいですが。
反対に、クレジット入りでも使う事が出来る自社サービス制作を、ビジネスとしてやっている場合もあるでしょう。
上記のように、例外はあるにしても基本的に著作権表記の必要があるものとないものは、同じフリーコンテンツでも根本的に使う目的が違うものだと言う事になると思います。
素材写真はあくまで素材に徹し、二次利用される目的で作られていますが、CCやMIT等のライセンス物はそれ自体が作品であり制作物として成立しているものを、他の作品の制作に一部使われたりすることを許可しているに過ぎません。
この辺もしかしたら素材制作者自身も理解せずに配布しているのではないかなーと思う時があります。
どういう性格の著作物にそれぞれのライセンスが使われるべきか
それではそれぞれのシーンについて、どのライセンスが有効なのか考えてみます。ちなみにこれについてはクリエイティブ・コモンズ以外のライセンスのことを[ライセンス]どれにする?制作者視点での目的別ライセンスの選び方で書いています。
「パブリックドメイン」
クリエイティブ・コモンズではありません。パブリックドメインについては前述の記事でも書いていますし、その他パブリックドメインのコンテンツは[webコンテンツ]パブリックドメインで使える音楽・画像・テキスト等まとめでも紹介しています。
これらは完全に著作権を保有する者が存在しない状態ですから、誰でも何の目的にでも使って良いことになります。素材、シェア、改変、再販売なんでもこいです★
「クレジット表記義務のない著作物」
クリエイティブ・コモンズではありません。著作権表記をしなくてもいい著作物です。ただしクレジットを書かずに作られた二次著作物はもはや元著作物となんの関係も見てとれません。「あ、この素材使ってるんだ」と見た人が気付く程度。「個人利用可、商用利用可のフリー素材サイト」と謳った素材サイトの素材はこの扱いにあります。以前の「表示」のオプションがないクリエイティブ・コモンズはこれに近い状態でした。が、恐らく著作権表記がないと結局著作物が誰のものか二次利用以降何も証明するものがないためか、「表示」オプションを含まないライセンスは2.1以降で削除されています。クリエイティブ・コモンズではこの状態にある著作物を表現できません。
国内法では完全な著作権放棄という状態が法的に存在しないこと(著作者人格権などは日本では基本的に放棄できない)、著作権まで完全に放棄したくない場合(放棄してしまうと、アカの他人がその元著作物について制作者より強い権利を有する事態が起きてしまう為)と言った都合で、幾分中途半端なこの状態が生まれます。我々web制作者にとってはとても有難いものです。
「表示」はクレジットのみを求める素材等
表示(BY、Attribution)は、そのコンテンツを何らかの形で利用した場合にその著作物情報の表記を求めるライセンスのオプションです。全てのクリエイティブ・コモンズ・ライセンスに付加されています。
誰が作った、なんという作品で、オリジナルはどこにあるという情報が必要です。
改変を加えてもよく、営利目的使用も禁じていない為、「表示」のみのライセンスの場合に考えられる利用の仕方は「自身が配布するクリエイティブ素材やクリエイティブ」や、「自身、自社での運営サイト内での使用」等になるのではないかと思います。それで商売をするのも問題ありませんし、著作者情報もつけやすいのではないかなと思います。
ソフトウェアなんかで言うMITやBSD系のライセンスと運用、活用のされ方は似ています。何となくクリエイティブ・コモンズ・ライセンスよりこれらのライセンスのコンテンツの方が活用しやすいイメージもありますけど、コードの場合は著作権表記をコード内に行うため目に触れにくい(クライアントが気にしない)という、コンテンツ自体の性質によって差があるだけです。
「非営利」は個人のブログや共有向け
非営利(NC、Noncommercial)、このライセンスで配布されたものを含むクリエイティブで商売をしてはいけません。
ただしライセンスの制限には適用除外というものがあり、特別に許可されたものに関しては商用に使う事も出来るでしょう。クリエイティブ・コモンズその他ライセンスと言うモノは「人の著作物を利用する際にいちいち許可を取って双方がめんどくさい思いをするより最低限この程度なら問題ないですよってラインを決めておこう」という意義もあるので、この場合「商売に使うんならちゃんと著作者の私にお金払ってね」と言う意味もあるかと思います。
書いてないと利用者はそれが出来るのか分かりませんから、配布者はもし「商売に使われるんならちゃんと利用料欲しいなぁ」と思っているならこのライセンス表記と共に、そう書いておいたほうがいいでしょう。
「継承」は利用者に著作者以上の権利を与えない
GPLは元々「一次著作者が作ってシェアした技術を使って作った二次著作物を、二次著作者の新たな制限によって一次著作者が使えなくなる」というような事態を防ぐために作られたものだと言う話ですが、継承(SA、Share Alike)はそのGPLに近いライセンスです。
シチュエーションとしては「営利目的可で配布した素材を利用した二次著作物を非営利にしか使えないコンテンツに利用されたくない」と言う場合、またはその逆。
表示―継承のみで配布したコンテンツを改変禁止や営利禁止にされる、または表示―非営利―継承で配布したものを営利可にされるといった、「著作物(または二次著作物)の著作権者が望まない形での頒布」を防ぎます。
反対に、継承がついていない他のライセンスは、著作権表示を行う限り非営利のものを営利にも、改変禁止のものを改変可にもできるということです。
追記:訂正
継承がついていない他のライセンスに関しても、緩める方向にライセンスをつけることは出来ないようです…。そりゃそうか、CCで公開されたものをPBにできたらまずいですよね…確かによく考えたらこの表記はおかしかったです。訂正致します><
「改変禁止」はそれ自体の意味や意図も含めてコンテンツであるもの
改変禁止(ND、No Derivative Works)は利用者の改変を禁じるものです。
写真であれば、撮ったそのままの状態でのみ二次利用(例えばブログへの掲載、ソーシャルでの共有)を許可します。あなたが写真を作品だと思っており、他の人に沢山見て欲しい、共有されたいとは思うものの、修正されたり他の作品のコラージュに使われたくない場合はこのモードを追加します。
例えば「朝の東京の風景」というタイトルで制作したものを、加工して夜の風景にされてしまってはあなたが写真で表現したかった趣旨は変わって伝わってしまいますよね。肝心なのは「この写真をあなたが撮った」ということでなく「あなたがこういう見た目のこういう被写体をこういうクオリティで撮った」と言う事が重要な場合です。加工されてしまってはあなたが撮ったことを主張は出来ても、あなたがどういう写真を撮る、どういう意図で撮ったと言う事が保持されないわけです。
写真で撮った風景や、被写体をありのままに伝えたいという報道写真等も、事実を多くの人に知らせると言う意味でこのモードで配布されるのが相応しいでしょう。撮影者が商業媒体であれば非営利を選ぶ、といった感じです。
「完全に著作権下にある著作物」には元々どんな利用のしかたも許されていない
これもクリエイティブ・コモンズではありません。さて、上記の者は全て著作者以外の人が使う事を念頭に置いたものですが、例えば友人同士でwebを介して送ったりしたものはどうでしょうか。友人は写真をダウンロードして、もしかしたら更に他の友達にも見せるかもしれません。このとき当然著作権の表記なんかは行われませんよね。ですが写真には当然著作権が発生しています。
マナー的にも、もらった写真をどこかにアップロードされると言うのはあまり気持ちのいいものではないはずです。プライベートなものですから、著作権表記したからどうこうって話ではないですよね(個人的な写真だろうが詩だろうが、人の作ったものはクリエイティブです)。
というわけでこうした写真にはライセンスなどの適用はなく、All rights reserved、完全に著作権に保護された形と言う事になります。
表にしてみた
ライセンス | コンテンツの用途 | 推奨する具体的な用途 |
---|---|---|
パブリックドメイン | クライアントワークに使用されることを想定したフリーコンテンツ | 無料素材サイト |
クレジット表記義務を課しない フリー素材 |
クライアントワークに使用されることを想定したフリー素材 |
|
表示 (CC BY) |
宣伝を目的としたフリー素材 | 無料素材 |
表示-非営利 (CC BY-NC) |
無料で使うならば何にでも使っていいもの | 有料コンテンツの試用版 |
表示-継承 (CC BY-SA) |
誰にも条件を付加されたくない素材 | 無料素材 |
表示-非営利-継承 (CC BY-NC-SA) |
無料のまま多くに使って欲しい素材 | 有料コンテンツの試用版 |
表示-改変禁止 (CC BY-ND) |
そのままの形で広めたいコンテンツ・作品 |
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表示-非営利-改変禁止 (CC BY-NC-ND) |
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コピーライト |
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その他全ての著作物 |
あなたが作った何らかの方法で共有したい制作物にそぐうライセンスをここから選べるでしょう。
webcre8の推奨する用途
ちなみに表の「推奨する具体的な用途」の項目は、webcre8の考える個人的な理想の形です。実際にそのように使われている例もありますが。
例えばロゴの権利をガチガチ(All rights reserved)にすると,他の人がその会社を紹介する際、ロゴを使って表現する事が出来ません。そんな事を個人にされてもメリットのない大会社は当然、ロゴを掲載したい相手から利用料を取ったりするわけですが(どうしても使いたいなら使わせてやってもいいよ)、特にソーシャルでの拡散を狙いたいベンチャーなんかだとロゴは露出されてナンボなわけです。文字で書かれるより宣伝効果が高いですしね。なので、「改変禁止」での使用であれば望むところでしょう。
ただ、営利目的だと嫌な場合もあるでしょうね。その場合は「非営利」です。
自社製品写真なんかも「改変禁止」でなら積極的に頒布されたいものであるはずです。そしてアフィリエイター等に商品の魅力を十分に伝えて欲しいのであれば営利目的の使用を許可するべきですよね。
これらに共通して言えるのは、「ロゴ」も「商品写真」も、本来その企業が出し惜しみする商品自体ではない単なる「広告の素材」としても扱えるものだという事です(当然CIやVI等守られるべきラインはあります)。
作品として制作した「写真」や「イラスト」「楽曲」「動画」等と違うのはそこです。これらは実際にクリエイティブ・コモン・ライセンスで頒布されることこそあるものの、本来は対価をもらって提供するべき商品です。
「作品やコンテンツ」と「素材」は同じ形式の単なるファイルであるとしても、著作権者の望む利用の形によって相応しいライセンスが変わるわけです。提供側はなんでもコピーライトにせずに、そうした場合のメリットを考えてライセンスを使い分けるべきだと思うのです。
利用規約にロゴの使い方を何にも書いてない企業も多いです。あれは使う側が困るのでもったいないなーと思っています。かく言うWEBCRE8.jpも遅々として進まないリニューアル時はその辺はっきりさせていくつもりですw 単なる個人ブログですけどねw
クリエイティブ・コモンズの写真を探すには
http://search.creativecommons.org/
ここでクリエイティブ・コモンズの写真が探せます。
ライセンスとしてクリエイティブ・コモンズを採用しているサイトの中から写真を探すことが出来ます。しかしこのラインナップの中に、前回のクリエイティブ・コモンズの写真を使う人のFlickr以外の選択肢(またはフォト蔵について)で紹介したフォト蔵は入っていません…w 頑張れフォト蔵!!ねじ込め!!(今のところ日本のサービスは組み込まれていない様です)
もちろんクリエイティブ・コモンズは写真だけでなく全てのクリエイティブを扱うライセンスであるためYouTubeなんかも名を連ねています。web上では写真コンテンツよりはマシに扱われている(マシって程度ですけど)動画や音楽もここで探せます。
まだ続いてしまいそう…
クリエイティブ・コモンズについては大体済んだんですけど、この話題を軸にソーシャルについて言及したくなったので(主題も変わるし)また別の記事にします。果てしない…。疲れてきてもう他の事を書きたい、webcre8なのでした。
追記:webで趣味で作品を公開している人たちへ
表の項目にちょっと追記しました。同人作品など、商売を行う場合はまたちょっと変わってきますが、無料で見られるコンテンツをweb上にアップしている人は、クリエイティブ・コモンズを宣言する事を考えてみて欲しいです。なにも書かなければそれは単なる「著作権に保護された画像」ですが、クリエイティブ・コモンズ表示・非営利・改変禁止を宣言していれば、それは「完全な形で、非営利であれば共有してよい画像」と言う事になります。そこにはあなたのクレジットも載ります(それを乗せない人は何も言わなくたって勝手に取っていきます)。
問題は、「見た人がシェアしたいしあなたも見て欲しいのにあなたの態度が明確ではない為シェアされない」と言う状況です。せっかくだったらたくさんの人に見て欲しいじゃないですか★是非検討してみてください!