直接ユーザーの声を聞くこととユーザーフレンドリーな施策の違い
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- 2013年04月11日
- 考える
- Webディレクション Web制作 考察
「ユーザーフレンドリーなサイトを作るというのはどういう事をすればいいんだろう?」ということについて考えたことです。私自身今出来ているわけではなくても、こうした形を目指したいですって話です。
webサイトはユーザーに使われるもの
普段私たちはwebサイトを制作していたり、制作の事を考えていたり、制作の事を考えている人の意見を読んだり聞いていたりしています。それらはもちろん(人によっては)長年の制作者としての、またはwebのユーザーとして培われてきた経験から来るものですよね。
そして、それらのことは全て、結局ユーザーが実際に使って便利であったり、心地よく感じるか、面白いと感じるかの為に繰り返されます。
ユーザーの言う通りに作っても上手くいかないのは何故か
しかし、ユーザーからの意見をそのまま聞いても上手くいかないという話を聞くことが少なくありません。
もちろん、上手くいくこともあるはずです。更に踏み込んで、ではなぜ「ユーザーの事を考えて施策を行う」という事がそのまま「ユーザーの声を聞くこと」にならないのでしょうか。
私の考えでは、これには二つの理由があります。
施策に対してユーザーから意見をもらうのは、未経験スタッフを増やすのと同義である
webサイトに限らないと思いますが、通常何かを作るときは一つの問題の解決の為であったり、「こういうのがあれば楽しくなるんじゃないか?」というアイディアを具現化する為にそれを作ろうという人が出てきます。
そして同様に、それがあれば便利だ、面白い、と考えた人が賛同し、作る技術を持った人が調達され、それが実際に作られていきます。
次に、それが思った通りの効果をもたらさないことがわかってきたり、何かが足らないことが実感できた場合、その解決策を探すわけですが…これがもしチーム内の話し合いで見つからないとした場合、ここに足りず、かつユーザーに求められるものはニーズ自体であって、ニーズを満たす解決策ではありません。
そして更にユーザーに意見を求める場合、もらうものはあくまでニーズや不満のみでなくてはならないと考えます。ユーザーに「これはこうしたほうがいい」というニーズを満たす(とユーザーが思っている)解決策を聞いた場合、それはユーザーに聞いているのではなく、制作に携わったことのない素人のスタッフに解決策を聞いているに過ぎなくなるのではないでしょうか。
一万人ユーザーがいてアンケートでサイトの方針を決めるとしたら、それは一万人いるけど意見を出すかはわからないスタッフと一緒に制作しているというようなものですよね。
制作者がユーザーから言葉で聞くべきなのはあくまでどこが不満か、どこが一番楽しいかといったニーズや感想であると思います。決して何があればもっと楽しくなるのか、どこがどう改善されれば使うかというニーズに対する解決策自体ではないはずです。
ユーザーの潜在的なニーズは言葉としては出てこない
ものを作っている場合、メンバーが実際にその制作物のプロトタイプやベータ版を使ってみたとしても、その制作物の欠点が見えなくなってしまっていることがあります。
これは、
- 扱う業界や制作物に精通している為、普通のユーザーが不慣れであることに気付けない
- 制作物に(無意識であっても)感情移入し、肩入れしてしまっている
といった要因がある為です。その為、ユーザーとして想定される制作に無関係な人に使ってもらった感想を聞くのはある程度有効であると思います。
ですが、ちょっと使ってもらって思いつくような不満点は、単なる個人の好みから慣れの問題、たまたまの思いつきも混じってしまい、数人に聞いただけではこの場合におけるユーザーのニーズとしては機能しません。
ユーザーから知り得たい情報はデータです。どの程度の割合でどうした層がどこに不満を持つか、そして実際の動きによって潜在的にどの部分をいらないと思っているか等、しっかり調べなければわからない部分であると考えます。
リンクのクリック率等で使われていない、もしくは役目を果たしていないナビゲーション等のリンクを察知する事が出来ますし、ユーザーの興味の薄い機能を発見する事が出来ます。
滞在時間やページ遷移のしかたから、情報が伝わっているか、サイトを使って満足しているかが読みとれます。
見つけるべきなのは、ユーザーが言葉に出るほど意識出来てはいないけど、潜在的にユーザーに求められている改善であると思います。
終わりに
私はこのブログだけでなく、普段の制作でそういった調査を一部求められることがありますが、実際のところ上に挙げたような精密な調査が出来ているわけではありません。そこまで分析できるほど頭良くないですしね…w
ですが真にユーザーの使いやすいサービスやwebサイトを目指すなら、先にこうした調査を行い公開してくれている先人たちのノウハウから傾向を学びつつ、実際のユーザーの動きから制作しているスタッフがその問題点や見えないニーズを探し出さなければいけないのだろうな、と感じているわけです。
こうしたノウハウは蓄積していくため、やはり経験は大事だなと思います。
前述のユーザーにどうして欲しいのか聞くというような施策の選び方もそれが向いたパターンもあるとは思います(例えばスタッフもユーザーと同様に手探りの状態である場合等)。
大規模なアンケートやモニターテストを行うような設備や環境を整えるか、アナリティクス等の分析ツールを使って運営しつつデータをとっていくという事など、運営するサービスに合った施策から行っていけばいいと思います。
余談
考えてみると、これは以前書いた記事とほぼ同じことを言っていますね。この記事は相手がユーザーであるのに対し、「どんなサイトを作りたいですか?」と聞いてはいけないは相手がクライアントです。
要は、相手が作って欲しいものは相手に聞かずに、実は欲しいと思っている筈のものを提案できるのが専門家なのではないかなというわけです。いやー、そうなっていきたいものですね!★